平成26年度事業報告 
 

特定非営利活動法人    

                             アジア高等教育支援機構

 I 活動成果

 ラオスにおける大学や高等専門学校によるロボットコンテスト準備のための2回のワークショップに講師の派遣や部品の寄贈を行うと共に,日本大使館やJICAと共にロボットコンテストの後援を行った.ロボットコンテストは年々技術が向上しており,それはロボット技術教育の向上につながると思われる.なおこのロボットコンテストは学生や教職員のみならず小学生も見学し,盛会のうちに終了した.
 また,ラオス国立大学やタイのモンクット工科大学ラカバンで通信関係実験研究および電気自動車関係の製作指導を実施し,現地大学教員や大学院生が国際学会に提出する研究論文を書ける下地が出来た

II 事業報告 

1.   ラオスロボットコンテストのための第1回ワークショップの開催

平成26年8月、ラオスロボットコンテストのためのワークショップが開催された。当NPOから2名が参加した。今回のワークショップ開催の目的は、ロボットに関する基礎知識を修得することのみならず工学的幅広い知識を修得することである。特に今年度はサッカー試合用のボールに赤外線発光ボールを使い,一段と高い技術レベルが要求される.小峰憲行理事が赤外線センサを含めたマイクロコンピュータに関する基礎知識について講演した。またロボットの製作については当NPOが委嘱した畠山忠男氏が講義を行った。


           日時: 平成26年8月14日ー15日

           場所: ラオス国立大学工学部

           参加者: 22名

        参加校:8校

        当NPOよりの参加者:飯島理事長,有賀理事,小峰監事 

           当NPOより寄付金: 48,308円

           寄付品目:マイクロプロセッサ―およびサッカー試合用赤外線発光ボール




赤外線センサ付サッカーボールの贈呈式 

 ワークショップ風景1     
 
ワークショップ風景2 
  
 
2.   ラオスロボットコンテストのための第2回ワークショップの開催

           日時: 平成26年12月25日ー26日開催

           場所: ラオス国立大学工学部

           参加者: 32名

         参加校: 12校

        当NPOよりの参加者:飯島理事長,森屋副理事長
 

 
 

ワークショップ開会式

 

当NPOから電子部品の寄贈



畠山先生によるロボット製作に関する講義


現地教員によるコンテストルール等の検討会
 


 
3. 第12 回ラオスロボットコンテストの開催 

    開催日時: 平成27年3月13日

    開催場所: ラオス国立大学工学部

    参加校: 8校

    参加者: 教員およびラオス大学学生,近隣の小学生

    当NPOよりの参加者:飯島理事長,森屋副理事長,有賀理事,小峰監事

    当NPOよりの賞金(ベストデザイン賞):12,000円(100US$相当)

    当NPO森屋副理事長からの賞金(ベスト技術賞):100US$ 

 ロボットコンテスト風景
   
   
   

現地英文紙に掲載された第12回ロボットコンテスト

 

当NPOの協力に対して贈られた感謝状 


 4. 研究指導
(1) 森屋俶昌理事による研究指導活動 
                                                  2014-07-30

研究指導報告書

指導大学:
 1.ラオス国立大学 工学部
 2.モンクット王工科大学 工学部


日時:   2014年7月12日から2014年7月16日まで

研究指導者:森屋 俶昌

日程:
  7月12日  日本航空 JL31便  羽田11:30発
  7月13日  バンコク エアーウエイ PG943便 バンコク09:45発  ビエンチャン 11:00着
          ドンキョウ先生と午後ホテルで打ち合わせ
          ドンキョウ先生とレストラン富士で夕食。
  7月14日  研究室に大学院学生3人集合
          自己紹介の後研究の内容を説明。
          大学院生とレストランで昼食。
          午後、今後の研究についての討論。
          カンプイ先生とレストラン富士で夕食。今後の研究についての討論。
  7月15日  PG944便 ビエンチャン11:40発 バンコク12:55着 KMITLに14:00着
          オララープ先生、アン先生、ジョンコン先生、ニッパー先生、ノッピン先生と話し合い。
          午後5時測定装置の取り扱いと、信号レベル校正方法の指導。
  7月16日  JL708便 バンコク08:10発、 成田16:25着 

研究指導の目的と現状
 ラオス国立大学工学部電子工学科に大学院修士課程が設置された。電子工学科の中に、3専攻課程がもうけられている。通信コースはその中の1課程である。
専攻の責任者はDr.Donekeo Lakanchanh 先生である。他にドンサモン先生、学部を卒業して間もない若い先生の合計3人で構成されている。入学した大学院生は4人在籍している。大学院の授業は毎日午後5時から7時まで、モンクット王工科大学(略称:KMITL)の先生が2週間交代で行っている。修士論文の指導はドンキョウ先生と副工学部長のカンプイ先生が行う。カンプイ先生が要職にあるため、ドンキョウ先生が学生4人の指導をしなくてはならない。研究設備もほとんどなく、悪い環境の中での研究を始めなくてはならない。この状況下で国際シンボジュームに発表出来るレベルの研究指導をする事を目標にしている。
 KMITLでは前学長のタウイン先生が大学を活性化するために、教員は論文をより多く作らなくてはならなくなった。長年月にわたり共同研究を行ってきた、情報工学科のオララープ先生を研究面で支持するために、ラオスの帰りにKMITLにより、測定器の取り扱いを指導した。

ラオス国立大学での研究指導の内容
 今回面接を行った3人の大学院生は
   1.Mr. Vilaphong Keophomhome
   2. Ms. Kongmaly Phoxay
   3. Mr. Vixay Vilavong
 ブンタビー君(Mr. Bounthavy Sengnwanxay)は勤務会社の上司の許可が得られなかったので、出席が出来なかった。コーンマリーさんが私立大学の教員であり、他の3人はラオ・テレコムの社員である。1と2の学生をカンプイ先生が指導を行い、3と欠席した学生をドンキョウ先生が指導する。
 4人の研究課題は
    1が大気雑音が通信に及ぼす影響。
    2が衛星通信の伝搬路に見られる、シンチレーション特性の解明。
    3がNOAA衛星からの信号解析。
    4(欠席)はKuバンド衛星通信に及ぼす降雨減衰特性。
 各人に質問したが、研究内容は多少理解しているが、研究の意味や、研究の進め方などは誰も考えていない。指導者が与えるものと思っている。与えられたならば、各自が自力で論文を作る意欲を示すように指導しなくてはならない。
 手始めに関連する参考書を読んでもらう。次に関連する論文を集め、自分のめざす方向の問題点を探してもらう。研究に必要とする機材を集め、必要とするデータを早く集めさせる。データの解析を行い従来の値との違いを調べ、理由を検討させるまでの道筋を明確にさせたい。

研究を進める上での問題点とその解決方法
 ラオス国立大学で最初の電子工学系大学院生を集めての、研究指導が今後展開される。指導教員の研究に対する能力が特に重要になる。現状では熱意が感じられない。研究を行うための時間が持てない。学会に入るための補助金もない。全てがない状態で研究をする意義を考えさせたい。指導教員の研究に対する情熱以外には、進歩は見られないと思う。時間の許す限り人間関係の構築に努めなくてはならない。
 4人の学生が必要とする最低の測定機器は研究室にある。足らないものは日本より搬入する予定だ。学生は各人がパソコンは持っている。デター解析には各人の能力が発揮出来る指導を進めていく。

今後の研究指導
 社会人での大学院生であるので、学習能力も高いと考える。自分から考える能力を持たせたい。その為には研究以外の会話にも力を入れたい。出来る限り長期間滞在して、人間関係を構築したい。特に会社が休みの土曜日、日曜日には研究室で朝から夕方まで話し合いをしていきたい。 


KMITLでの研究指導
 衛星信号に見られるシンチレーション現象の研究をオララープ先生が行っている。十分な測定器もない中で、次々と新しい論文を発表している。論文のデターを見ていると我々が過去に得たデターとの差があることに気がついた。原因は測定方法とデター解析に起因していた。新たに測定器を日本からアン先生に運んでもらった。新たな測定器では正確なデターがいつでも得られ、デター解析に誤差が入りにくい。信号のレベル校正方法とデター解析の手法を説明した。
 今後より高度な論文が発表出来るように支援したい。

 

研究についての打合せと測定法の指導
                                                  2014-11-30

研究指導報告書

指導大学:ラオス国立大学 工学部 大学院修士課程学生

日時:   2014年9月30日(火曜日)から2014年10月9日(木曜日)まで10日間

研究指導者:森屋 俶昌

日程
   9月30日(火曜日)タイ国際航空 TG643便 成田12:00発  バンコク16:30着
       乗り換え便、タイ国際航空 TG2574便 バンコク19:40発 ビエンチャン20:50着
  10月1日(水曜日) ラオス国立大学研究室でドンキョウ先生と今回の研究指導に関して打ち合        わせ。
       昼食を近くのレストランでドンキョウ先生と大学院生4人と共に。
       午後、大学院生と今回の研究指導の目的を遂行するための話し合い。
       日本から持ってきた松下通信工業製の、2チャンネル記録計の取り扱いを説明。
     2日(木曜日) 雨量観測装置(太田計器製作所M-50型)の基本測定ブロックを学生に説明
       NOAA衛星の画像解析を行う学生と研究内容を討論。
     3日(金曜日) VHF帯全方向性アンテナ(NOAA衛星の受信機に使用するアンテナ)を自作
       してきた学生と特性の測定。
       VHF受信機にアンテナを接続してNOAA衛星の信号を受信。
     4日(土曜日) 衛星受信アンテナの設置に関する話し合い。午後、今後の研究についての
       討論。
       副学長のサイコン先生、カンプイ先生、ラオス電力会社部長とレストラン富士で夕食。
  10月5日(日曜日)雨量計の設置     
     6日(月曜日)電子工学科学生全員参列の式典に参加
       大学が主催の昼食会に参加
       アンテナ設置のための野外作業  
     7日(火曜日)教師の日(国民祭日)
       設置した装置の再調整。
       研究追行のための実験設備に関する問題点の検討。
     8日(水曜日)ブン・オーク・パンサー(仏教上の祭り)
       学生と一緒に早朝、お寺にご供物を持ってお参りに行った。
       飛行場で大学院生と昼食を取る。
       タイ国際航空 TG2571便 13:40ビエンチャン発  14:45バンコク着
       機内でBAC仏教救援センターの伊藤 佳通氏とラオスでの教育支援に関する話し合い。
     9日(木曜日)タイ国際航空 TG660便 羽田21:10着
  
大学院の現状
 ラオス国立大学工学部電子工学科に大学院修士課程が設置され1年が経過した。授業は毎晩5時から7時までKMITLの先生により行われている。学生は全員が同じ科目を受講している。KMITLの先生は2週間の期間ごとにラオスに来て、ホテルに宿泊して毎晩教えている。授業は12月中旬まで行われる。
 修士論文を作るための指導も活発化してきている。学生4人とも自分の修士論文のタイトル(英文)は明確に答えられている。論文制作の面接はラオス側の指導教員と、タイのKMITL教員によって行われている。論文の概要はまとめられている。KMITLの教員との面接はKMITLで行われた。
 
通信専攻4人の修士論文進捗状況
 前回(7月12日から16日まで)は短時間の面接と、実験装置の現状を調べるだけであった。帰国後、学生に参考になる論文を送った。今回の面接からは殆ど進歩の形跡は見られなかった。英文の論文を見る機会がないので、自分から研究の問題点を探す事は難しそうだ。与えられた問題の回答を見つけるだけだ。研究の本質がまだ理解されていないようだ。
ラオス側の研究指導者であるカンプイ先生の考えは、研究室にある過去に取得したデータを再度利用して、論文にまとめさせれば良いのではないかとの意見を持っていた。
この様な考えでは最重要な箇所を知らずに、コピー論文を書くのと同一と思われる。物がなく時間的な余裕もない中で、新しい発見や成果を得るまでの苦労をさせなくては、大学院教育の意義が半減してしまう。論文の体裁のみに時間を費やし,論文の内容はコピーでは困る。
 内容の伴った論文に仕上げてもらうために、学生との会話が益々重要になる。

研究指導の内容と現状
 今回は通信専攻の下記に記す4人全員の大学院生が出席した。
   1.Mr. Vilaphong Keophomhome
   2. Ms. Kongmaly Phoxay
   3. Mr. Vixay Vilavong
   4. Mr. Bounthavy Sengnwanxay
 ブンタービィ君は勤務会社の上司の許可が得られなかったので、前回は出席が出来なかった。4人の学生の中では一番行動力が見られる。コーンマリーさんが公立の専門学校の教員であり、社交性に富み明るい性格の人だ。他の2人はラオ・テレコムの社員である。1と2の学生をカンプイ先生が指導を行い、3と4の学生をドンキョウ先生が指導する。
 今回の研究指導の目標は、4人の大学院生が研究に必要なデータが取得出来るようにすることである。
 全てのデータはPCに保存して、データ処理もPCで行う考えで研究を進める予定であった。しかし、ラオスの現状を考えると不可能に近い。理由は
  1.データーロガーの扱いにラオスの人は慣れていない。カンプイ先生が研究を始めた時点で、データはローガーに取り入れる準備をしたが、完全な記録は未だに得られていない。原因は若い研究者が継続して育てられない事が考えられる。カンプイ先生に何度も話をしても、一時しのぎになってしまう。ドンキョウ先生になり進歩があるかと思ったが、無駄だった。ドンキョウ先生は機材やPCを盛んに要求するが、思いつきで十分な下調べもしない。雨量計が欲しいとの強い要望があったので、ラオスに出てくる1ヶ月前大学宛ての小荷物として郵便扱いで送った。今回研究室を調べたら2台の雨量計が出てきた。1台は新品で未使用品であった。PCも中古を1台持ってきたが、学生は全員持っているので使うことはなかった。
 指導者が十分な知見を持って指導して欲しいことを痛感した。
 学生に対しての指導も不十分と思われる。
  2.研究課題の3テーマはカンプイ先生が決めたと思われる。研究室にある測定機材やカンプイ先生に興味があり,理解していることが考えられる。しかし、測定器は5年以上動作をしていない状態だ。また、彼は公務があり論文を読む時間がないと思われる。これらの問題点をどの様に解決するのか考慮して欲しかった。
 一方、NOAA衛星の画像解析は、ドンキョウ先生の思いつきの感じが強いテーマだ。彼自身がどこまで理解しているのか不安が残る。KMITLに留学中に、大学院生が市販の電子部品を集めて、衛星からの画像信号をPCに取り入れ、リモートセンシングの技術で気象現象を、解明する研究であったと思われる。タイでは画像受信まで成功している。修士論文も読ませてもらった。日本では修士論文にまとめるにはテーマを絞らないと論文は出来ない。ラオスではタイの論文のコピーで済むだろう。しかし、どのようにして衛星信号を受信するのか心配になり、参考書と電子部品を揃えてラオスに持って行った。アンテナは参考書を読みながら作成した。市販のVHF受信機でNOAA衛星の信号を受信することまでは出来た。ここまでは良くやったが、その先の作業は完全に止まったままである。
  3.降雨減衰の研究に雨量のデータが必要であるので、日本から今回、雨量計測器を持ってきたがリチーム電池が不良のため動作しなかった。Kuバンドの衛星信号を受信するために作業をしたが、信号は受信できなかった。次回全ての必要データと機材を持ち込む必要がある。
  4.大気雑音特性とシンチレーション特性の研究は、衛星信号を受信しなくてはならないが、3.に書いたように信号は受信できなかった。長期間測定器を動作させなかった為に,全てを最初から行う必要が生じた。
  5.学生からの質問で一番多かったのは、データ収集に関する問題であった。何一つとして動作していない測定器を毎日眺めるだけでは、論文を期限までに提出出来るかが不安になる。測定器はあっても電源さえ入れられない。取り扱い説明書の殆どは日本語のものであり、英文の取り扱い説明書は数少ない。メーカーに問い合わせても英文の物は極めて少ない。日本製の測定器は一部の会社を除いて英文は用意されていない。購入にはかなり高額な金額が要求される。
 測定器は概して高価であるので、市販の汎用機を組み合わせて使う場合、取り扱い説明書はない。研究室で組み立てた装置も取り扱い説明書は存在しない。測定器の取り扱いが研究に大きな問題として存在する。実験を主体にした研究では測定器の取り扱いが研究に大きなファクターを占めてしまう。
  6.多くの記録計を使いデータを収集するために、記録紙と記録計に使うインクが必要になる。毎日、毎時記録を取るのでインク代と記録紙の金額が大きくなってしまう。今回パナソニックの記録計に使用する記録紙30本、インク20個の見積金額は11万円であった3ヶ月ほどで使い切ってしまう。ラオスでは購入出来ないので毎回持って来なくてはならない。
7.大学院生の研究の場を維持していくためには、かなりの頻度でラオスに来ることが望ましい。自立した研究が継続されるには、かなりの年月が必要になりそうだ。しかし、経済的に不可能であるので、メールなどによる研究指導が考えられる。今後の課題である。

研究を進める上での問題点とその解決方法
 現在ラオスで研究を進める上で大切なことは、指導教員の研究に対する能力が特に重要であると考える。現状では熱意が全く感じられない。経済的な観点より研究を行うための時間が持てない。学会に入るための補助金もない。全てがない状態で研究をする意義を考えさせたい。指導教員の研究に対する情熱がなくては、何らの進歩は見られないと思う。また優秀な学生を注意深く見守り,指導を積極的に行う事が有効だと考えられる。密なる人間関係の構築に努めることで、短時間で成果が得られるとも思われる。
 4人の学生が必要とする最低の測定機器は研究室にある。足りないものは日本より搬入する予定だ。学生は各人がパソコンは持っている。デター解析には各人の能力が発揮出来る指導を進めていく。日頃からPCに論文作成に必要なデータは保存させるように注意している。

今後の研究指導
 次回ラオスには間を開けないで指導に行きたい。いくらか研究を始める気持ちが芽生えてきたと感じた。口では要求ばかりするが、論文を渡しても何らの反応が感じられない。論文を見る事を次回は指導したい。また出来る限り長期間滞在して、人間関係を構築したい。特に会社が休みの土曜日、日曜日には研究室で朝から夕方まで話し合いをしていきたい。昼食は皆で研究室の中で済ませたい。 

 

測定器の使用法の指導
 
                                                 2014-12-04

研究指導報告書

指導大学:ラオス国立大学 工学部 大学院修士課程学生

日時:   2014年11月05日(水曜日)から
          2014年11月14日(金曜日)までの10日間

研究指導者:森屋 俶昌

日程
  11月05日(水曜日)タイ国際航空 TG683便 羽田10:45発 バンコク15:45着
     06日(木曜日) タイ国際航空 TG570便 バンコク11:45発 ビエンチャン12:55着
       大学院生ビラポーン君が出迎え、大学の研究室で日本で特別発注して持ってきた記録紙
       と記録計用ペンを確認(梱包を開く)。
     07日(金曜日) 
       午後、大学院生ビライ君の勤務先である、LAO TELECOM社を訪問。彼の職場と仕事の
       内容を説明してもらう。
       夕方、電子工学科大学院生全員によるサツカーの試合を観覧。夜、大学院生全員による
       招待夕食会に参加。席上、KMITLのチャニン先生とラオスの大学院について話し合い。
     08日(土曜日) 
       ビライ君とNOAA衛星の軌道情報の取得方法など討論。
       NOAA衛星の画像解析を指導するKMITLのサラワット先生と研究室で、研究全体の説明
       があった。行う学生と研究内容を討論。
       夜、サラワット先生と4人の大学院生と夕食。
     09日(日曜日)GPS衛星による測位計測器により、アンテナ設置場所の緯度、経度を求める
       Kuバンドの衛星(Thaicom-5,Thaicom-4)を受信するためのアンテナ設置。
     10日(月曜日)衛星受信アンテナの方位再調整。
       サラワット先生がLAO TELECOM社の屋上に、NOAA衛星の受信装置設置状態を写真で
       見せてくれた。。
     11日(火曜日)雨量計の動作再確認。
       プンミー先生と昼食。
       気象測定器(気温、湿度)の取り付け。      
     12日(水曜日)
       データ取得上の全測定器の動作を確認。
       カンプイ先生と夕食 明年度募集の大学院生も本年度の学生と、ほぼ同じ研究テーマで
       修士論文の指導を行いたい意向。
     13日(木曜日)
       Kuバンドの衛星信号の受信状態を記録計上で確認。
       温度、湿度の記録状態を確認。
       雨量計の動作再確認。研究室の整理整頓。
       カンプイ先生と昼食。
       大学院生全員で夕食
       TG575便 ヴィエンチャン 21:40発 バンコク 22:45着
     14日(金曜日)
       TG660便 バンコク 14:50発, 羽田 22:30着


 研究室の実験設備に関して
  前々回(7月12日から16日まで)と前回(9月30日から10月9日まで)で、学生の研究課題と内容を理解した上で、実験に必要な機材で手元にある装置を持ってきた。今回は新しく発注した記録紙やペンなどを持ってきた。最低限の機材であるが,修士論文を作るための必要装置の設定は終了した。        大気雑音には新しく、アンリツのマイクロ波帯電力計を使い、より良好な測定を行う準備をしたが、取り扱い説明書が見当たらず測定は出来なかった。    雨量観測装置は動作しているが、しつりょく出力電圧が小さく記録計の最低入力電圧に足りないために、完全な動作は出来ていない。Data Loggerを使用した方法なら記録が取れる。現状の雨量測定状態は原始的な方法だから,雨量読み取りが煩雑になるのが欠点だ。また正確な時計機構がないので大雨の時誤差が出てくる。                                
                                    
通信専攻4人に対する研究指導の現状
 通信専攻の大学院生の氏名とラオス国立大学の指導者、KMITLのアドバイサーを下記に併記した。
 1.Mr. Vilaphong Keophomhome ポンチャイ先生(副) カンプイ先生(正)
 2. Ms. Kongmaly Phoxay ポンチャイ先生(副)  ポンパサー先生(正)
 3. Mr. Vixay Vilavong ソラワート先生(副) ドンキョウ先生(正)
 4. Mr. Bounthavy Sengnwanxay ピシャイ先生(副)  カンプイ先生(正)

 4名の学生に対する各人の研究体制を列記します。
 1.Vixay君
 今回の出張でKMITLのソラワート先生にお会いし、ビライ君の研究が明らかになった。7月ドンキョウ先生から説明して頂いた内容とほぼ同じ物であったが、具体的な研究の進め方が明確に理解された。ドンキョウ先生の話では、NOAA衛星の受信機装置の入手方法など不明箇所が多く、期間内までに論文提出は困難と思った。日本で関連する書物を買い求め、具体的な研究は7月以前から始まった。全方位のアンテナは7月には完成し、VHF受信機に接続して衛星からの変調信号を受信した。電子部品を買い集めラオスに7月には届けた。衛星信号受信機は1週間程度で完成出来るまでのキットを手渡した。それ以降ビライ君からの応答は止まってしまった。質問しても答えがなかった。自分で受信機を作らずKMITLからの借用物で信号を受信し、データ解析まで行う考えがビライ君にはなかった。
9日の日曜日にKMITLの大学院生が、KMITLで使用している受信装置一式持ってきた。アンテナはビライ君の会社の屋上に設置し、衛星からのデータをPCに取り込み画像解析を行う道筋が見えてきた。画像信号の受信が出来たかは確認していない。ソラワット先生は熱心に指導するので,今後は彼に任せることにした。
研究の内容を十分に理解していないドンキョウ先生の、研究の進め方には問題がありそうだ。

 2.Bounthavy君
 4人の学生中で一番研究に熱心さを感じる。ただ、衛星電波の降雨減衰特性の研究は論文をまとめるのが大変だと思われる。実験設備が大がかりになり、解析に使用するパラメータが多い点が、何処の領域までラオスの設備で可能になるか。 雨量計が現在研究室に3台あるので、学生は他の場所にも設置を希望している。具体的な場所は上げていないが研究のテーマにしてみたい。
 ラオスでは短時間に降雨強度が観測される。降雨強度の特徴を明らかにするのも意義がある。ただ降雨強度が観測できる雨量計を明確にすることが大切と思われる。殆どの雨量計は100mm(1時間降雨量)を超えると誤算が多くなる。この問題を解決する事も必要である。無人観測が出来る測定器の準備も必要になる。
 ラオスでは衛星のアンテナ仰角が50度以上で設置されるので、等価降雨領域は日本などと比較して短いので、雨量計との相関を求めるのも意義がある。以前、東海大学で各種雨量計の直線性特性の測定データもあるので活用できる。
 衛星の降雨による減衰は解明された問題が多い。反面、低雑音増幅器の雑音指数が低減したことより、アンテナに周囲空間より進入する空間雑音により、降雨中の雑音が増加している。アンテナ指向性特性二より雑音量は異なるが、アンテナ設置場所により特性は異なるであろう。小口径アンテナなら大学で十分特性を測定出来るだろう。
 降雨減衰に関する大学での研究は今後継続出来るテーマと考えられる。学生の能力を見極めて指導したい。
  
 3.Kongmalyさん
 英語による会話は彼女が一番上手だ。何回となく温度計、湿度計の設置を要求してきたが、今回VAISALA製のHMT330を持って行き、設置を完了した時点で、要求事項がなくなり別人のようになった。要求は頻繁に言うがその後の取り扱いや、データ整理方法などは何一つ言わない。
 シンチレーション特性が気温や湿度に深く関係する事は勉強したのだろう。しかし、他の重要な事は忘れてしまったのかも知れない。研究の最初は論文を読むことだ。前回渡した論文に対して質問はまだない。シンチレーションの特性に関係する、アンテナ口径、アンテナ仰角、気象パラメータなどの重要性を頻繁に話しても反応はない。
 他人対する関心は高いが,自身に対する関心は全く表現がない。
 シンチレーション現象の何を目標に研究課題をまとめるのか知りたい。カンプイ先生は研究室で過去に取ったデータを解析すれば良いとの考えである。ただ、気象関係のデータが紛失しているので、現象の発生からの解析は出来ない。

 4.Vilaphong君
 研究に興味を持っていない態度が心配だ。何故大学院に入学したのか理由を聞きたい。人間的には素晴らしいが研究で成果が出るか心配だ。
 カンプイ先生が10年以上前に行った研究を再度行う事だと思う。現在受信機の雑音指数は1dB近く下がっている。そのため受信アンテナには大気雑音のレベルが増加してきた。また、小口径アンテナではアンテナ指向特性が広いので、より広範囲までの熱雑音が信号に加算される。信号対雑音比が受信の質を決める。特に降雨時は大気雑音が上昇するので衛星信号受信には注意が必要だ。測定上雑音レベルはあまり大きな値ではない。晴天時の雑音レベルは1dB以内であるので、測定は従来の測定器を使用した方法では誤差が大きい。今回電力計を使用して正確な測定を行いたい。研究室には電力計が2台あるので興味あるデータが得られるだろう。
 最後に残るのはビラポン君のやる気だけだ。英語の勉強が最初に必要かも知れない。

 これからの研究指導に関して
 大学院生にはまだ十分な基礎知識がない。文献を渡しても読む力がないのか、レスポンスが見られない。電気磁気学の授業をするわけにも行かない。研究は電波工学の基礎が必要である。基礎力がないので疑問を持つことがない。ここに大きな障害がある。先に進む道を探す事を考えている。
 次回(12月21日から12月26日まで)は全ての測定器(1.シンチレーションの観測,2.大気雑音の発生特性,3.降雨減衰の観測)が完動し記録データが取れる状態にする。学生に基本的なプリントを持って行き、研究の基本事項を説明する。
 特にビラポン君との会話を密にして,研究のおもしろさを知ってもらう。大気雑音は乾季でも毎日レベル変動が観測されるので,記録データの値が何のパラメーターの影響を受けているかを探す作業をしてもらう。理論より測定結果から大気雑音の影響が衛星通信に及ぼす現象に興味を持てるようにして行きたい。

あとがき
 電子工学科に大学院が誕生して1年経過した。おそらく成果などまだ見られないと思う。これからどの様に成果を上げていくかが問われる。通信専攻の4人はラオスでは恵まれた会社や専門学校の先生である。将来ラオスの発展に寄与できるか不安を感じる。基礎知識の不足と他人任せの勉強には閉口する。指導教員との関係にも疑問がある。指導教員は学生に接しているのだろうか。短期間で成果が出るものではないが、放任しておいても時間の消費だけになる。
 大学院生に3回会った。2回目は全員に意気込みを感じた。3回目は聞きたいことがなくなり、少し逃げている空気を感じた。
 修士論文の指導はどうあるべきか。答えが見当たらない。
 実験に使う測定器を準備して,論文や参考書まで持ち込み、質問は何でも出来る環境にしたが学生からの反応がなくなった。次回、学生の反応を見て指導して行く。

 

アンテナの設置確認法の指導

(2) 飯島敏雄理事による研究指導活動

 

指導研究テーマ

電気自動車(EV)設計製作の指導(続)

出張期間

2014年8月10日-2014年8月17日 (8日間)

カウンターパート名

機械工学科:Assoc. Prof. Korakanh Pasomsouk,

同上:   Assoc. Prof. Sengratry Kythavone

電気工学科:Assoc. Prof. Vansay Meksarik

情報工学科:Assoc. Prof. Sayphone Houngbounyuang

電子工学科:Instructer, Mr. Sipaseuth Suvilath

指導内容

前年度の指導でラオス大学工学部の4学科が協力してラオス初の電気自動車が製作され,1月に開催されたラオス政府とJICA主催の「ラオス国 低公害型公共交通システム導入に向けた基礎情報収集・確認調査」のワークショップでその成果をKorakann助教授が代表して発表したが,その参加者約80名程度には知られたが,現地英字新聞Vientian Timesの記者が更に広くラオス国民に知ってもらうべきということで大学を訪問し,取材して下さり,下のような記事を8月20日に掲載してくださった.
 EV製作の第1段階は終了したが,今後どのような形でEV人材をさらに育成していくかを議論した.
(1)前回は予算と技術不足からEVの主電源電池に鉛電池を使わざるを得なかったが,今後はリチュウムイオン電池を使ったEVを製作したい.
(2)排ガスや騒音の問題が大きいツクツク(三輪車タクシー)のEV化,および使用台数の圧倒的に多いオートバイのEV化も行いたい.
(3)日本のEVメーカでEV製作の研修をしたい.
(4)EV専門家をラオスに招聘し,指導を受けたい.
(5)EVのモデルカーが学習のために欲しい
というような議論結果であるが上記のことを実現するためにはかなりの高額の予算が必要である.しかしラオス大学には微々たる予算しかないので,今後はJICAの草の根技術協力プロジェクトに応募して予算を獲得してEVプロジェクトを進めていくことが解決策と思われるので,JICAと相談してみることになった.

備考

今後の意見交換はメールで行う.

 





ラオス大学で製作されたラオス初の電気自動車と現地英字新聞(Vientiane Times)記事